経済局の認定により、各種の特例措置、補助金の申請などを行うことができます。
特別事業承継税制イメージ

 法人版事業承継税制は、後継者である受贈者・相続人等が、円滑化法の認定を受けている非上場会社の株式等を贈与又は相続等により取得した場合において、その非上場株式等に係る贈与税・相続税について、一定の要件のもと、その納税を猶予し、後継者の死亡等により、納税が猶予されている贈与税・相続税の納付が免除される制度です。
平成30年度税制改正では、法人版事業承継税制について、これまでの措置に加え、10年間の措置として、納税猶予の対象となる非上場株式等の制限(総株式数の3分の2まで)の撤廃や、納税猶予割合の引上げ(80%から100%)等がされた特例措置が創設されました。

Ⅰ.後継者に無税で事業継承

1. 非上場株式等を贈与された際の贈与税は全額納税猶予される

事業承継に関する計画を作成し都道府県庁に提出して、先代経営者が代表権(制限付きのものを除く。以下同様)を後継者に譲り後継者が代表権を持った後に、先代経営者が所有する非上場株式等を一括して贈与すると特例事業承継税制の適用を受けることができ、贈与税額の全額が納税猶予されます。

2. 猶予贈与税額は先代経営者の死亡によって免除

設例 総株主等議決権数 12万株
(評価額6億円)全株式を先代経営者が保有、後継者(先代経営者の長男)に全株式を贈与
贈与税額 (1)暦年課税
(6億円 − 110万円)× 55% − 640万円 = 3億2,299万5千円
(2)相続時精算課税

(6億円 − 2,500万円)× 20% = 1億1,500万円

非上場株式等の贈与税の特例納税猶予を受ける場合、贈与された株式の評価額の100%に基づいて暦年課税又は相続時精算課税により計算した贈与税額全額が納税猶予されます。また、その納税猶予贈与税額は、贈与者が死亡したときに一定の手続きにより免除され、贈与時点の評価額により相続税の課税価格に算入されて相続税が計算されます。

3. 相続税の納税猶予税額

上記設例で、株式以外の相続財産が2億円、相続人は長男と二男の2名、長男は相続では財産を取得せず、二男が2億円の財産を相続した場合の相続税額は次のとおりです。

●相続税の総額(計算例)

{(6億円+2億円) − (3,000万円 + 600万円×2)} ÷ 2 = 3億7,900万円
(3億7,900万円×50% − 4,200万円 = 1億4,750万円) × 2 = 2億9,500万円

●各人の相続税額

長男 2億9,500万円 × 6億円/8億円=2億2,125万円(全額納税猶予される)
二男 2億9,500万円×2億円/8億円= 7,375万円

このように、長男は「特例経営承継相続人等」(後継者)として対象株式に対応する相続税額2億2,125万円の全額を納税猶予されることになります。
特例事業承継税制によって、後継者への事業承継に向けた株式の移行が非常に容易になりました。

Ⅱ.特例承継計画の事前提出が条件

1. 「特例承継計画」を都道府県庁に提出する

特例事業承継税制による贈与税又は相続税の特例納税猶予は、原則として平成30年4月1日から令和5年3月31日までに、会社が認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受けて作成した「特例承継計画」を都道府県庁に提出した場合に限って適用を受けることができます。

2. 「特例承継計画」の提出前に先代経営者が死亡した場合

「特例承継計画」を提出していなかったとしても、平成30年1月1日から令和5年3月31日までの期間に先代経営者が死亡した場合には、死亡後に一定の手続きをすることによって特例事業承継税制の適用を受けることができます。また、この期間内であれば、贈与した後に「特例承継計画」を提出することも認められます。

3. 適用を受けるには一定の要件を満たす必要がある

特例事業承継税制の適用を受けるには、会社が「中小企業であること」「風俗営業をしていないこと」「資産管理会社(資産保有型会社又は資産運用型会社)でないこと」など一定の要件を満たしていなければなりません。

また、先代経営者は「代表者であったいずれかの時点」と「贈与又は相続の時点」の両方において、「同族関係者で総株主等議決権数の過半数の議決権を有し、かつ同族関係者の間で筆頭株主でなければならない」などの要件があります。後継者についても、贈与の場合には「20歳以上でかつ役員に就任してから3年以上経過」しており、「贈与時点で代表権を有していること」などの要件を満たさなければ適用を受けることができません。

4. 「特例承継計画」を提出した場合でも令和9年12月31日までに贈与しなければならない

令和5年3月31日までに計画を提出した場合には、特例事業承継税制の適用の権利を手に入れたことになります。ただし、令和9年12月31日までに非上場株式等を後継者に贈与しなければ特例事業承継税制の適用の権利を喪失することになります。

また「特例承継計画」を提出していれば、令和5年4月1日から令和9年12月31日までの間に、先代経営者が後継者に非上場株式等を贈与する前に死亡しても、特例事業承継税制による相続税の納税猶予の適用を受けることができます。

Ⅲ. 一般事業承継税制と特例事業承継税制の違い

1. 対象株式が100%に

一般事業承継税制の対象株式は、総株主等議決権数の3分の2が限度ですが、特例事業承継税制(以下「特例制度」)では総株主等議決権数のすべてが対象です。

2. 相続時の納税猶予適用対象が株式評価額の100%に

相続税の納税猶予税額の計算対象は、一般事業承継税制は適用対象となる株式等の評価額の80%に相当する金額に対応する相続税額でした。特例制度では適用対象となる株式等の評価額の100%に相当する金額に対応する相続税額が猶予されます。

3. 雇用確保要件は実質撤廃

一般事業承継税制では、贈与又は相続等から5年間の事業継続期間中に一定の要件を満たさなくなると認定が取り消され、猶予税額全額の納税が必要です。その要件の一つが雇用確保要件で、5年平均の従業員数が贈与時又は相続時の従業員数の80%を下回らないようにしなければなりません。特例制度では、80%を下回った場合でも、認定経営革新等支援機関の意見が記載された「下回った理由を記載した書類」が提出された場合等には、認定が取り消されないこととされており、実質的に雇用確保要件は撤廃されました。

4. 受贈者の範囲拡大

一般事業承継税制では、適用対象となる後継者は筆頭株主である代表者に限られています。しかし特例制度では、特例承継計画に記載された代表権を有する後継者で、総株主等議決権数の10%以上を有することとなる上位2名又は3名が対象となります。

5. 推定相続人以外でも相続時精算課税の適用を受けることが可能に

相続時精算課税のもともとの適用対象者は推定相続人と孫のみですが、特例制度では、推定相続人と孫以外の親族や第三者でも相続時精算課税の適用を受けて非上場株式等の贈与税の特例納税猶予の適用を受けることができます。

6. 特例承継計画の提出

特例事業承継税制の適用を受けるには、認定経営革新等支援機関の指導及び助言を受けて会社が作成した「特例承継計画」の都道府県庁への提出が必要です。

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