平成30年以降の事業承継税制の内容をご説明します。[平成30年6月1日記]

こんにちは。資産税専門の税理士の木全(キマタ)です!

会社のオーナーは、会社の株式という財産を持っています。喜ばしいことではありますが、どんどん成長している会社の株式の価値は、会社の業績と連動してどんどん大きくなっていきます。と同時に株価がどんどん高くなっていきます。
そうして高くなった価値をもった株式を大量に持ったまま、その会社のオーナーが死亡した場合、どうなるでしょうか?

その会社の株式にも多額の相続税が課税され国に取られます。

相続税を課税されてしまうのは、財産を持っている人の運命なので、覚悟していらっしゃるかもしれません。ですが、資産家が最も嫌うのはお金を持っていかれることです。

もし相続人の1人が株式だけを相続したとしても、その相続人は、お金で相続税を払わなければいけないのです。なんと理不尽なことでしょう。物納は困難なのが現状です。

まだ、子供が1人の場合には平気かもしれませんが、もし子供が2人以上いたらどうでしょう?会社を承継する人に株式を相続させるなら、その他の兄弟姉妹には、現金・預金を分けてあげなければ争いになってしまいます。

こういった問題を解決するために、政府は画期的な制度を導入しました。

その制度が、「事業承継税制」です。

この制度の趣旨は、「世の中の中小企業が、次世代に事業を継いでくれるのであれば、相続税や贈与税を大幅に減免します。」というものです。
この制度を受けることができた場合、株式にかかる贈与税や相続税をなんと最終的に100%免除してくれる制度です!(平成30年1月以降)

実はこの制度は、平成21年の税制改正で作られました。しかし、この制度ができたばかりのころは、税金を免除にする条件がかなり厳しく、経済産業省の認定が必要となるなど利用者はとても少なかったのです。そのことをうけ、平成27年の税制改正で大幅に要件を緩和し、利用者は少しずつ増えていました。(参考:日刊工業新聞)

そして平成29年12月14日に発表された税制改正大綱で、大幅な条件緩和が発表されました。

事業承継税制の内容

事業承継税制とは、先代経営者から後継者に株式を生前贈与する時か、相続させる時に使える制度です。
つまり最終的には同じ金額が免除されるということになります。

最終的に相続税の80%も免除してくれるので、その金額は何億円規模になることもあります。それだけの税金を免除してもいいから、世の中の中小企業に頑張ってもらいたい!という優遇措置なのです。皆さん是非、積極的に活用しましょう!

と、いうのが平成29年までの取扱ですが、平成30年からは大幅に拡充して、相続税も贈与税も100%免除になり、大幅な節税となります。

事業承継税制を受けるための4つの条件

この制度を使うための条件は、なかなか細かいところもありますが、多くの中小企業がこの制度を使える条件を満たしていると思います。

4つの条件とは以下のものです。
1. 人の条件
2. 会社の条件
3. スタートしてから5年間の条件
4. 免除になるための最後の条件

1. 人の条件

まず、この制度は使うためには、先代経営者が満たすべき条件と、後を継ぐ後継者が満たすべき条件があります。

a)先代経営者が満たすべき条件とは、●会社の代表者であったこと、●会社の筆頭株主であったことです。そして後継者が満たすべき条件とは、b)●会社の代表者になること、●会社の筆頭株主になることです。(先代経営者が会長になって、後継者が社長となるパターンもOKです)

しかし、後継者に株式を贈与する際には、後継者が3年以上取締役であることが条件になります。この点を忘れると、税金がドーンと掛かることになります。

この制度は親族でなくても使うことができます。従業員に対しても使うことができるのですが、お金のやりとりが発生する売買の場合には、この制度は受けられません。使うためには、1つの手法をもう一度考慮することになります。

2. 会社の条件

次に会社が満たすべき条件です。まず、第一に会社が中小企業者に該当することです。中小企業者とは次の条件を満たす会社をいいます。

出典:中小企業庁「FAQ中小企業の定義について」

中小企業者の定義で注目していただきたい点は、資本金基準 or 従業員基準である点です。いずれかを満たせば中小企業者に該当します。

従業員数は容易に変更することはできませんが、資本金の額は自由に減らすことが可能です。もし現在、条件を満たしていなくても、資本金を減額すれば、この制度を利用することが可能です。

ちなみに、不動産を管理するための法人、いわゆる資産管理会社に該当する場合には、この制度は受けられません。資産管理会社に該当するかどうかは細かい判定が必要になりますが、ざっくりいうと、実際に事務所があって、血のつながりのない従業員が5人以上いれば、事業実態のある会社として、この制度が受けられます。

人の条件と、会社の条件を満たしていれば、まずはこの制度をスタートさせることが可能です。申請は、その法人が所在する都道府県から認定をもらう必要があります。

3. スタートしてから5年間の条件

スタートしてから5年間は事業を継続させなければいけません。

この制度は、スタートしてから5年間、守らなければいけないルールがあります。途中でこのルールを破ってしまった場合には、猶予されていた税金は利息をつけて納めなければいけません。

そのルールのうち、主なものは下記の通りです。

1.後継者が会社の代表者であり続けること
2.後継者が会社の株式を保有し続けること
3.会社の雇用の8割を維持すること

多くの会社で、この点はクリアできると考えられます。
一言でいえば、後継者が5年間社長であり続け、株主であり続け、雇用の8割を守ることです。

この中で特に重要な条件は、雇用の8割を維持することです。この制度が普及しなかった最大の理由は、この条件を満たせる自信のある経営者が少なかったからです。10人の会社であれば、従業員が7人になってしまえば、納税猶予は打ち切られ、利息をつけて税金を払わなければいけません。(もっとも利子税は年利0.8%だけなので、大きな負担にはならない)

中小企業であれば、従業員が2割減ってしまうようなことが起きる可能性は十分あります。リストラ、解雇リスクなどもあります。

そこで、この点について平成27年に条件が緩和されました。これまでは、8割の判定を毎年判定していたのですが、平成27年からは5年間の平均で判定することと改められたのです。

この改正により、一時的に従業員が減ったとしても、5年の平均でみれば8割維持できている場合には、納税猶予は続行されることになり、経営者のリスクが大幅に緩和されました。

さらに、この点について平成30年には、「もしこの条件を満たせなくても、経営状況の悪化や正当な理由があればいいよ」という形で、ただちに打ち切りになるわけではなくなります。※詳細はまだ発表されていませんのでわかりませんが。

4. 免除になるための最後の条件

5年経ってもすぐに免除になるわけではありません。

5年間の事業継続が終わっても、すぐに税金が免除になるわけではありません。
5年経ったら、社長はやめてOKですし、雇用の8割も意識しなくてOKです。しかし1つだけ守り続けなければいけないルールがあるのです。

それは株式を保有し続けることです。この点は重要です。

もし、株式を誰かに売却してキャッシュ化するのであれば、今まで猶予されていた税金を払わなければいけません。また、もし会社を解散させてキャッシュ化した場合も同様です。※解散の場合には、実際に戻ってくる金額を限度に、税金を支払ってもらいます。

ちなみに5年間の条件を守った後に、納税をすることとなってしまった場合には、5年間分の利子税(年利0.8%)は免除されます。どちらにせよ払うはずだった税金だと思っていただければ、利息分は得したことになります。

後継者が、この同じ制度(事業承継税制)を使って、次の後継者に事業を承継することができれば、税金が免除になります。つまり、1代目から2代目に承継される時の税金は、2代目が3代目経営者に事業承継ができた場合に免除になるという仕組みです。

かなり息の長い話ではありますが、相続税が何千万から数億単位で免除になるのであれば、挑戦する価値は十分あると思います。

ちなみに、2代目が死亡してしまった場合にも、税金は免除になります。

この制度のデメリットは、対応できる専門家が少ないこと。
この制度の最大の欠点は、まだ歴史が浅いため、対応できる専門家が極めて少ないことから、税理士がこの制度を使うことに躊躇してしまうケースです。
故に、顧問税理士にこの制度の相談をして、いまいち切れ味のいい返答がもらえない場合には、事業承継に強い税理士に相談してみることをお勧めします。

まとめ

これまでの事業承継対策は、意図的に会社の利益を一時的に少なくし、株価を圧縮したうえで、一気に贈与するというやり方が横行していました。私は、このようなやり方は、専門家として積極的に勧めるべきものではないと考えています。

一方で、この事業承継税制という制度は、制度を使うために会社の利益をコントロールする必要は、一切ありません。

また、政府としても中小企業の応援、雇用継続の観点から、大幅にバックアップしてくれている制度です。是非、会社経営者さんは、この制度を積極的に検討していきたいと思います。

最後になりますが、この制度はとても良い制度なのですが、事業承継をする前には、必ず名義株というものがないかどうかを確認する必要があります。名義株の対策をしないまま事業承継を進めてしまうと大変なことになります。

労務管理・財務・経営・不動産価格の査定、セミナー依頼など、ご連絡・ご相談に関するお問い合わせ

木全美千男への労務管理・財務・経営、セミナー依頼はこちら 木全美千男への労務管理・財務・経営、セミナー依頼はこちら